「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「重要土地調査規制法」)が会期末ギリギリの6月16日未明、参院本会議で採決が行われ、与党のほか維新、国民民主など一部野党の賛成も得て、可決、成立しました。(NHK NEWS WEB・6月16日、朝日新聞DIGITAL・6月16日など)
重要土地調査規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所など安全保障上重要な施設の周辺や国境に近い離島をなどを「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、利用状況の調査や取引の規制などするものです。外国人による基地周辺や国境離島での土地取得によって、基地機能が阻害されたり、国境警備に支障が生じたりすることを防止するための法律とされています。
それだけを聞くと、必要な法律に思えます。しかし、規制の網がやたらに広く、かつ、法文が曖昧なため、その目的以上の調査、規制につながりかねないと、一部野党が反対してきました。調査対象は外国人に限らず、自国民にも及ぶのです。また、国会審議の中で、外国資本が自衛隊施設周辺の土地を購入したことによって何らかの問題が起きたという事実(「立法事実」といいます)はなかったことも明らかになっています。
弁護士会もこぞって、懸念を示しました。(日弁連『重要土地等調査規制法案に反対する会長声明』、愛知県弁護士会『重要施設等の土地等の規制等に関する法律案に反対する会長声明』)
東京新聞の記事に問題点がコンパクトにまとめられています。(東京新聞Web・6月16日)
この法律の曖昧さ、それ故の濫用の危険性については、国会参院での参考人質疑において、与党推薦の吉原祥子氏(東京財団政策研究所研究員)ですら、「条文案を読むだけでは、さまざまな臆測が広がる恐れがあると審議プロセスを見て痛感した」と、解釈の余地が残ることを認めざるを得ないほどです。
同じ参考人質疑における野党推薦の馬奈木厳太郎弁護士の発言が非常に説得的です。(論座『取り返しのつかない土地規制法案―参院で参考人として意見を述べました』)
重要土地調査規制法について、引き続きの廃止あるいは抜本改正を求め続ける必要があります。(浜島将周)
<6.22.追記>
自由法曹団が、6月19日付で、『「土地利用規制法」の採決強行に断固抗議し、同法の速やかな廃止を求める』声明を発出しました。ご一読ください。
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