緑オリーブ法律事務所ブログ

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進む〝AI〟捜査
2021-06-02 · by blogid · in 刑事事件, 、 情報問題,

 警察庁が被疑者側のSNS(交流サイト)を人工知能(AI)で解析し、人物の相関図を作成する捜査システムの導入を決めた、との報道がありました。(日経新聞WEB版・5月30日
 SNSが特殊詐欺などで多数の関与者をつなぐ「犯罪インフラ」として使われている側面があるので、指示役を含む組織の全体像を解明、摘発に結びつけたい、ということのようです。年内に警察庁と警視庁などの5都府県警で運用を始め、順次全国の警察に広げる方針で、幅広く効率的な情報収集が目指されることになります。


 具体的には、組織的な犯罪に関与したとされる捜査対象者が使うSNSのアカウントが対象で、ツイッターの「フォロー」、フェイスブックの「友達」といった機能の承認・登録先や、コメントの返信相手などをたどり、つながるアカウントを調べて相関図を作成する。相関図から浮上した人物のコメントは捜査員が精査する。内容などから勧誘役や指示役のアカウントを突き止め、このアカウントを再度AI解析にかけて新たな相関図を作成する。このような解析と精査を繰り返して犯罪組織の「可視化」を目指す、とのことです。


 すでに警察におけるAIの活用は進んでいます。報道された範囲でも、
・ 京都府警、過去の10万件以上の大量の犯罪情報をAIを分析して、性犯罪やひったくりなどの発生を予測するシステムを導入(2016年)
・ 福岡県警、暴力団組員らの行動パターンを基に、襲撃の予兆を把握するシステムの開発に着手(2018年)
・ 神奈川県警、AIを活用した犯罪や交通事故の発生予測システムの本格運用を目指す方針(2019年)
を拾うことができます。
 また、アメリカでは、より広く犯罪予測や被告人の再犯リスク予測にAIが活用されています。


 犯罪捜査のデジタル化が必要なことは間違いありませんが、個人のプライバシー保護を考えれば、法整備による明確な歯止めが必要です。集められたひとつひとつの情報は極断片的なものでも、それが集積されれば、犯罪とは無関係な交友関係ばかりでなく、思想信条までも分析されてしまいかねないからです。
 その濫用を防止するシステム(警察が集めた情報が適正に取り扱われているのか、捜査終了後には不要になったデータが適正に消去されているか)が整備されることなく、捜査手段のみが広がっていくことには賛成できません。(浜島将周)


 


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