「デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク」が、菅政権が目玉政策として進めているデジタル庁構想を含むデジタル化関連法案について、その問題点を指摘すべく、去る2月25日付で、『「デジタル監視法案」(デジタル化関連法案)について、プライバシー保護の観点から慎重審議と問題個所の撤回・修正を求める意見書」を出しました。
同意見書は、濵嶌も会員である自由法曹団等を含む参加法律家団体および個人の連名で出されたものです。
意見書全文は、とても大部ですが、以下で読むことができます。→こちら
ここでは、意見の趣旨のみ、貼り付けておきます。
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1 情報システムの共通仕様化が図られる中で、データ主体(=本人)の同意を要せず、省庁間の情報共有を容易化する法の仕組みを撤回すること。
2 整備法において、マイナンバー法を改正し、従業員の転職時等に使用者間での特定個人情報の提供を認める制度は、本人の同意を要件としても認められないこと。
3 整備法において、マイナンバー法を改正し、医師、看護師、税理士など32の国家資格者についてマイナンバーの登録を義務付ける制度は、認められないこと。
4 特定商取引法の訪問販売等の取引類型(通信販売を除く)全部と特定商品預託法の預託等取引契約について、オンライン契約と対面契約とを区別することなく、契約書面や概要書面の交付義務に関して、「消費者が承諾した場合」を要件として電子化を認めることは、認められないこと。
5 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案において、標準化の名のもとに、地方自治体において積み重ねられてきた個人情報保護の仕組みを無効化する法制度は、撤回すること。
6 デジタル庁の創設と同時に、個人のプライバシーを保護するための基本的な制度として、以下の仕組みが含まれた制度の整備が同時に行われる必要があること。
⑴ 公権力が、自ら又は民間企業を利用して、あらゆる人々のインターネット上のデータを網羅的に収集・検索する情報監視を禁止する法制度。
⑵ 監視カメラ映像やGPS位置情報などを取得し、それを捜査等に利用するに際して、これを適正化するための新たな法規制。
⑶ 通信傍受の適正な実施についての独立した第三者機関による監督制度。
7 個人情報保護委員会の組織を拡大・強化し、その独立性を高めることによって、その監督権限を強め、体制を強化することが必要不可欠であること。
8 特定秘密の指定と情報機関の諸活動について、特別の監視機関が必要であること
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なお、発表記者会見の様子は、以下でご覧いただけます。→こちら
(浜島将周)
<4.7.追記>
デジタル関連法案が4月6日、衆議院を通過しました。(日経新聞web・4月6日、NHK NEWS WEB・4月6日)
デジタル関連法案については、4月2日の衆院内閣委員会で、障害者への配慮を明確にするなど数か所修正の修正がありました。しかし、民間や行政機関、地方自治体でばらばらだった個人情報保護制度を一元化し情報のやりとりを容易にする個人情報保護法改正案に関し、行政機関が個人情報を目的外に使うことができる要件をより限定的にすることや、自己情報コントロール権の保障を明記することなどを求めた立憲民主党の修正案については、否決されています。
緊急記者会見をした「デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク」の海渡雄一弁護士や三宅弘弁護士が、「監視社会化に対して十分な手当てができていない」などと批判されたようですが、その懸念はもっともです。(東京新聞WEB・4月6日、4月7日)
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