緑オリーブ法律事務所ブログ

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 非正規労働者と正社員の待遇格差を巡って、10月13日と15日、立て続けに最高裁判所の判断が示されました。
 最高裁判決は、すべて最高裁HPにアップされています。


・ 大阪医科薬科大学事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf


・ メトロコマース事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf


・ 日本郵便(福岡)事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/771/089771_hanrei.pdf


・ 日本郵便(東京)事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/772/089772_hanrei.pdf


・ 日本郵便(大阪)事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/773/089773_hanrei.pdf


 派遣やパートなどの非正規労働者は、バブル崩壊後の1990年代以降、「雇用の調整弁」として、あるいは、「安価な労働力」として、増加の一途をたどりました。本年8月時点で、雇用労働者の4割弱、2000万人を超えているそうです。
 このコロナ禍で雇い止めや解雇が相次いだ事実は、「雇用の調整弁」たる非正規労働者の立場を浮き彫りにしました。
 また、正社員に比べ残業代等を除く平均賃金で10万円以上も低い事実は、「安価な労働力」たる非正規労働者の立場を浮き彫りにしています。


 このような非正規労働者の権利の保護、地位の安定、待遇格差の是正のために労働契約法に追加されたのが、労働契約法20条でした。(旧労働契約法20条は現在削除され、パートタイム・有期雇用労働法に引き継がれています。)
 今回の各訴訟は、同条を根拠に、格差の是正を求めて提訴されていました。


労働契約法20条
 「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」


 最高裁は、賞与に関する大阪医科薬科大学の元アルバイト職員の訴訟、および、退職金に関する東京メトロ子会社メトロコマースの元契約社員の訴訟では、各企業等における賞与・退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべきだと判断した上で、今回の各ケースは正社員とは業務の内容や責任の程度に違いがあったため、不合理な格差には当たらないとし、退職金や賞与の支払いを命じた二審判決を変更しました。
 他方、扶養手当や年末年始勤務手当の支給、夏季・冬季休暇の付与に関する日本郵便の契約社員の訴訟では、正社員と職務内容が違うことを考慮しても不合理だとして、手当支給や休暇付与を認めました。


 判断が分かれた理由については、手当の趣旨は明確であるのに対し、賞与や退職金は支給目的が複合的であることや、賞与や退職金は金額が大きく、企業経営に対し配慮が必要であることなどが指摘されています。
 そうであったとしても、最高裁が、ささいな業務内容の違いなどをことさら取り上げて、格差を容認してしまったことは、労働契約法20条の趣旨を無視したも同然で、社会に与える影響は大きく、残念としかいいようがありません。(浜島将周)

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