緑オリーブ法律事務所ブログ

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 衆議院選挙における、いわゆる一票の格差是正のため、小選挙区を「10増10減」する改正公職選挙法が11月18日、与党および一部を除く野党各党の賛成多数で可決、成立しました。区割りを見直す選挙区は25都道府県の140選挙区に及びます。衆議院選挙に小選挙区が導入されて以来最大規模の改定となるため、大きく報道されました。(NHK NEW WEB・11月18日朝日新聞DIGITAL・11月19日読売新聞ONLINE・11月18日


 NHKの選挙WEBに詳しく解説がされていますので、詳細はそちらをご覧ください。


 今回、選挙区が増えるのは5つの都県です。
・ 東京は5増えて30に
・ 神奈川は2増えて20に
・ 埼玉、愛知は1ずつ増えて16に
・ 千葉は1増えて14に
なります。


 選挙区が減るのは10の県です。いずれも1減り、
・ 広島は6に
・ 宮城、新潟は5に
・ 福島、岡山は4に
・ 滋賀、山口、愛媛、長崎は3に
・ 和歌山は2に
なります。


 また、北海道、茨城、栃木、群馬、岐阜、静岡、大阪、兵庫、島根、福岡の10の道府県では、選挙区の数は今のままですが、線引きが変更されます。


 この新区割りを一昨年の国勢調査をもとに試算すると、一票の格差は最大1.999倍となり、現在の2.096倍から縮小します。


 なお、比例代表についても、5つのブロックで「3増3減」となります。
・ 東京ブロックは2増えて19に
・ 南関東ブロックが1増えて23に
・ 東北ブロックは1減って12に
・ 北陸信越ブロック、中国ブロックは1ずつ減って10に
なります。


 これで一票の格差是正は終わり、一人一票実現は実現されたのか?といえば、私はそのようには思いません。
 今回の改定は、平成21年8月30日実施の衆院選(最大格差2.304倍)に関する最高裁大法廷平成23年3月23日判決、平成24年12月16日実施の衆院選(最大格差2.43倍)に関する最高裁大法廷平成25年11月20日判決、平成26年12月14日実施の衆院選(最大格差2.13倍)に関する最高裁大法廷平成27年11月25日判決をふまえたものです。各判決では、「一人別枠方式」の違憲性が指摘されていました(旧公選法は「一人別枠方式」+「最大剰余方式」による議席配分)。新公選法は「一人別枠方式」を排除し、「アダムズ方式」(※)による議席配分としました。
 しかし、すでにして一票の格差は最大1.999倍だというのであり、一人0.5票の有権者が存在していることになります。もともと、「アダムズ方式」の採用自体が、定数減となる都道府県数をおさえるための妥協の産物でした。


(※)アダムズ方式:議席数の配分の仕方として、各選挙区の人口を同じ数字で割って、商の小数点以下を切り上げた整数を議席数とするもの。議席配分法にはほかにもいくつかあるが、アダムズ方式は議席の変動幅が小さいことや、人口の少ない選挙区にも必ず1議席が配分されることなどが利点とされる。


 一人一票の実現のためには、今後も是正の取り組みが求められますが、その際には、ともかく「2倍」を超えないように…という弥縫策にとどめるのではなく、長期的な視点に立った抜本的な制度改正の検討が必要です。
 個人的には、一人一票の実現という観点からも、政党が多数存在し民意の幅が広い日本の実情からも、小選挙区制度の維持には無理があると考えます。


 11月11日の中日新聞/東京新聞サンデー版の<大図解>が「主権を考える」と題し、一票の格差是正・一人一票実現を特集してくださいました。私たち弁護士グループのリーダーである升永英俊弁護士のコメントも大きく載せられています。是非じっくり読んでいただきたいです。(浜島将周)



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