緑オリーブ法律事務所ブログ

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 東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐり、東電の株主らが東電の元役員5人に対し、津波対策を怠るなど善管注意義務違反によって福島原発事故を発生させ、東電に巨額の損害を与えたとして、東電に代わって、東電に与えた損害の賠償を求めた訴訟(東電株主代表訴訟)について、東京地裁が13日、元役員ら4人に連帯して13兆3210億円を支払うよう命じました。原発事故をめぐり(旧)経営陣の民事上の責任を認めた初めての司法判断であることや、賠償額が国内の裁判では過去最高とみられることから、広く報道されました。(NHK NEWS WEB・7月13日朝日新聞DIGITAL・7月13日福島民報web・7月14日


 13兆円の内訳は、
・廃炉と汚染水の対策費用…1兆6150億円
・被災者への損害賠償(支払合意済みのもの)…7兆0834億円
・除染費用、中間貯蔵対策費用(平成31年度までのもの)…4兆6226億円
です。


 この判決の意義や評価についての詳細は、上記のNHKの解説が詳しいほか、下記に弁護団の声明と判決文の掲載ページのURLを貼り付けます。
 ひとことだけ述べると、つい先日、6月17日に最高裁が国の責任を否定する判決を言い渡しましたが(本ブログの「原発事故、最高裁は国の責任を認めず」参照)、そこでは明確には言及されなかった(おそらく、重要な争点であったはずなのに、あえて無視された)津波の予見可能性を正面から検討し、元役員らの責任を認定したことは、実質的に先の最高裁判断に反論するもので、大きな意義があると考えます。(浜島将周)


 東電株主代表訴訟の弁護団声明と判決全文はこちらから



<追記>
 13兆円の賠償を命じても、実際には支払えるはずもなく、意味がないのでは?という疑問を伺ったので、少し追記します。


 たしかに、元役員らの資産をもれなく掻き集めても、13兆円なんてことはなり得ません。支払えるだけ支払っていただいて、自己破産ということにならざるを得ないでしょう。


 ただし、大会社の役員であれば、今回のような多額の賠償に備え、「会社役員賠償責任保険」に加入されていることが多いので、その限りでは支払われます。もっとも、保険契約で支払限度額が設定されていますので(せいぜい数億円程度か)、13兆円には到底足りません。
 他方、会社法上、株主全員の同意を得るなどして、役員の責任の一部または全部を免除できる制度が設けられています(会社法424条以下)。これにより、賠償額の減免が可能ではありますが、世論の動向もにらみながら、東電が実際にその方向に動き出せるかは不明です。


 弁護団の河合弘之弁護士のコメントがありましたが(「いい加減なことをして事故を起こすと、役員が個人的に損害賠償させられるんだよ。それぐらい重い責任なんだよと、突き付けたわけですね。後世に残る名判決だと思います。」)、株主代表訴訟には、損害回復もさることながら、こういった社会的意義もあります。



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