緑オリーブ法律事務所ブログ

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 すっかり国政選挙後の風物詩の感がありますが、今回の衆議院総選挙についても、10月31日の投票日の翌日11月1日に、全289小選挙区について、一人一票実現訴訟(いわゆる一票の格差訴訟)を全国一斉提訴しました。(朝日新聞DIGITAL・11月1日毎日新聞Web・11月1日
 名古屋高裁管轄の全24小選挙区(愛知県15選挙区、岐阜県5選挙区、三重県4選挙区)についても提訴し、夕方のニュースで各局に取り上げていただきました。(NHK名古屋東海テレビCBC名古屋テレビ


 私たちの弁護士グループがこの運動(訴訟)を始めてから、今回が5回目の衆院選になります。
・ 平成21年総選挙(平成23年3月23日最高裁大法廷判決)…最大較差2.30倍→違憲状態判決
・ 平成24年総選挙(平成25年11月20日最高裁大法廷判決)…最大較差2.43倍→違憲状態判決
・ 平成26年総選挙(平成27年11月25日最高裁大法廷判決)…最大較差2.13倍(小選挙区「0増5減」による区割り見直し)→違憲状態判決
と、最大較差が2倍を超え、違憲状態判決が続いていました。しかし、前回
・ 平成29年総選挙(平成30年12月19日最高裁大法廷判決)…最大較差1.98倍(小選挙区「0増6減」による区割り見直し)→合憲判決
と、最大較差が2倍未満となったことに加え、将来的にアダムズ方式による定数の再配分とそれに基づく選挙区割りがなされることなど、国会の努力の姿勢をも加味しての合憲判決となりました。(詳しくは、このブログの「一人一票実現訴訟 最高裁判決(2017年衆院選)」の記事をご覧ください。)


 今回、最大較差2.066倍(鳥取県1区:東京都10区)(令和2年9月1日現在)と再び最大較差が2倍を超えたことは前回と異なりますが、他方、平成28年改正法によってアダムズ方式による見直しが決まっている状態であることは前回と同じです。


 私たちは、2倍もの最大較差があること=0.5票分の価値しかない一票が存在していること自体がおかしいと考えていますから、(ほぼ)2倍基準に達しているから合憲だとは思えませんし、違憲の区割りが将来是正される予定だから現在も合憲だという最高裁の理屈は論理的だとは思えません。
 〝1倍〟=一人〝1票〟が実現され、誰にも等しく1票ずつが与えられ、投票価値の平等が達成されてはじめて、民意を正しく反映した国会が形成されます。私たちが求めているのは、そのような民意が正しく反映された国会による意思決定です。


 他方で、一人一票の実現は地方の声の切り捨てだ、との声も聞かれます。この点、国会議員は地元選挙区の代弁者でなく、「全国民の代表」(憲法43条1項)ですから、そもそもそのような批判は当たらないのですが、ただ、議員の実態として、「おらが町の代表者」の色合いが濃いのも事実です。
 また、一人一票を厳密に実現しようとすれば、市区町村域をほとんど無視して、選挙のたびに区割りをし直さざるを得なくなる、との批判もあります。「投票価値の平等」の重みを考えれば、それも仕方ないように思いますが、候補者と有権者のつながりを希薄にしてしまうようにも思います。
 個人的な意見をいわせていただくと、これらの問題点も含めて解決するには、小選挙区制をやめるほかないのではないでしょうか。保守から革新までさまざまな政党が存在し、なかなか2大政党制が定着しない日本には、小選挙区制はあわない、もっと大きなまとまりでの選挙制度を検討すべきです。


 今回の訴訟にも是非ご注目ください。(浜島将周)



― 緑オリーブ法律事務所は名古屋市緑区・天白区・豊明市・東郷町を中心にみなさまの身近なトラブル解決をサポートする弁護士の事務所です ―

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