緑オリーブ法律事務所ブログ

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労働基準監督署で解雇や賃金不払いなどの労働問題に関する相談業務にあたっている「総合労働相談員」について、厚生労働省が、賃金を変えずに、一部相談員の労働時間を1日15〜30分延長する契約更新を提案していた、との報道がありました。(毎日新聞・2月18日朝刊

総合労働相談員は、各地の労働局と雇用契約を結んだ1年契約の非正規職員で、勤務は月15日で日給制とのことです。
労働契約法では、労働条件の変更には原則として労使の合意が必要だ、と定められています(第8条)。ところが、今回は、厚労省が一方的にFAXで通知文を送っただけのケースもあったようです。労働時間が延びるのに賃金が変わらないため、時給に換算すると実質賃下げになる相談員がいたにもかかわらず、です。
厚労省は、相談員側から「ブラック企業と同じやり方だ」と反発を受けて、すでに提案を撤回した、とのことですが、当然でしょう。
「…労働条件その他の労働者の働く環境の整備…を図ることを任務」とし(厚生労働省設置法第3条1項)、ブラック企業を取り締まるべき側の厚労省が、労働条件の実質的引き下げを一方的に、しかも立場の不安定な非正規職員に対してするなどというのは、かなり問題です。

ところで、今回の総合労働相談員に限らず、公務員の世界でも実は、〝非正規化〟が進んでいます。(以下、東京新聞・2013年9月11日『非正規公務員 3人に1人 官製ワーキングプア』より)

2012年時点で、地方自治体の非正規率は3割を超え、60~70万人が非正規として働いていると推計されています。国家公務員でも非常勤職員が14万人超で、審議会委員や保護司など非正規と捉えにくい人を除いても約7万人になるそうです。
自治労調査によると、子育て(保育士など)や消費者問題(消費生活相談員など)を扱う職種では、非正規率が5割を超えるなどしているとのこと。

そのような非正規公務員の賃金は、日額・時給型の平均時給が950円ということですから、フルタイムで一年間働いたとしても年収は200万円に達しません。
月給型の平均月給は16万円ということですから、やはり年収は200万円に達しません。
「官製ワーキングプア」と言われる所以です。このような非正規公務員がケースワーカーとして、生活保護の窓口で活動するという不条理な事態も起こっています。

「ブラック企業」「ワーキングプア」といった言葉が定着して久しくなりました。それが公務員にも当てはまってしまうというのは、あまりに悲しい現実です。
公務員でも民間でも、労働者として当たり前の権利が当たり前に認められ、真面目に働けばちゃんと食べていけるだけの当たり前の対価をもらえる、そういう当たり前の世の中をつくらなければなりません。
労働条件の引き下げに限らず、雇用・労働について、おかしいなと思ったら、お気軽に弁護士にご相談ください。(浜島将周)

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