緑オリーブ法律事務所ブログ

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憲法改正のテーマとして、近ごろ「緊急事態条項」が注目されています。安倍首相もこれを「極めて重く大切な課題」だと明言しています。(産経新聞WEB版・2015年11月12日

安倍政権はこれまで、96条改憲(憲法改正要件の緩和)を言い出して、でも国民から猛反発を食らって引っ込め、仕方ないから閣議決定による9条の解釈変更と安全保障関連法案の強行採決という手段で、国民から何を言われようと9条の実質改憲を試みて、次は緊急事態条項の新設を掲げる…この条項の新設は〝お試し〟改憲などと言われますが、最終標的は9条でしょう。実際、安倍首相は先日、9条の明文改憲に言及しました。

このときの、
稲田朋美議員(自民党政調会長):憲法学者の7割が自衛隊の違憲性を指摘している、現実に合わなくなっている9条2項をこのままにしておくことこそが立憲主義の空洞化だ
安倍晋三首相:憲法学者が自衛隊に疑いを持っている状況をなくすべきだという考え方もある
…という遣り取り(中日新聞・2月4日朝刊)は詭弁だとしか言いようがありません。
憲法学者の自衛隊違憲論を理由に9条改憲を主張するのなら、その前に、あれだけ多くの憲法学者が憲法違反だと指摘した集団的自衛権行使容認の閣議決定や安全保障関連法案の採決を強行すべきではありませんでした。中日新聞・東京新聞の社説朝日新聞の社説には、まったくもって同感です。

さて、話を「緊急事態条項」に戻します。
緊急事態条項の新設は、単なる〝お試し〟にとどまらないものです。私たちの生活をガラリと変えてしまいかねません。

自民党憲法草案98条、99条を見ると、緊急事態条項は内閣が宣言できることになっています。一応、国会の承認が必要とされていますが、事後承認でもよいとされ、またそもそも議院内閣制ですので与党が多数を占めているはずで、不承認となることはまずないでしょう。
100日毎に内閣の判断でなされる緊急事態宣言の継続手続についても、同じ問題があります。

また、緊急事態宣言が発せられたときは、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるとされています。つまり、緊急事態宣言下では、内閣は自分だけの判断で法律がつくれるのですから、やりたいようにやれてしまいます。国民はそれに従わなければならず、基本的人権は「尊重」されるだけで、実際には侵害されっぱなしとなるかもしれません。
それに対する司法のチェック機能強化などについては、規定すらされていません。

さらに、緊急事態宣言中は、衆議院は解散されず、両議院の議員の任期や選挙期日の特例を設けることができるともされています。つまり、緊急事態宣言下では、国会議員メンバーの固定化も可能になるので、国会や内閣に対する国民の民主的コントロールが及ばなくなりえるのです。

権力者にここまでの権限を与えてしまってよいのでしょうか。
憲法学者の木村草太さんが、安倍政権の改憲意欲について、「犯罪者が刑法を改正しろと言っているようなもの」だと言われましたが(神奈川新聞カナコロ・1月24日)、まさにそのとおりだと思います。

緊急事態条項については、静岡の内山宙弁護士が、「参議院選挙のためにスターウォーズを見ておくべき3つの理由」と題して、10年ぶりの新作映画『フォースの覚醒』が公開され注目を集めている『スターウォーズ』のストーリーを下敷きに問題点を解説されていて、面白くて解りやすいので、是非お読みください。(浜島将周)

 

※ この記事は、秘密保全法に反対する愛知の会のニュースレター『極秘通信』18号に私が寄稿した記事『「お試し改憲」などさせない』を改変したものです。

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