緑オリーブ法律事務所ブログ

緑オリーブ法律事務所ブログ

 医師は、診察をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならないとされています(医師法24条1項)。「診療録」とはいわゆる「カルテ」のことです。
 カルテは、5年間保存しなければならないとされています(同条2項)が、大きな病院では10年間あるいは、それ以上保存しているところも多いようです。


  これまで、個人が開設する診療所から大学病院まで、様々な規模の病院の様々なカルテを見てきました。
  私が弁護士登録した当時は手書きのカルテがほとんどでしたが、現在では、多くの病院が電子カルテになっています(もちろん、まだ手書きのところもあります)。


 一般的には、電子カルテになると改ざんの虞が低下すると言われています。
 確かに、手書きのカルテの時代には、修正液で修正をして、その上に新たな記載がなされているカルテをよく見ました。望ましい修正の仕方ではありませんが、個人病院などでは珍しいことではなかったのです(ちなみに、修正は、二本線を引き、記載者が押印するのが良いと思います)。修正液で修正されたカルテは、コピーをすると元の記載がわからなくなってしまいますから、裁判官とともに、カルテの原本を光ですかして、元に何が書いてあるのか確認するということも珍しくありませんでした。
 電子カルテになると、そういう苦労はありません。削除すると削除履歴が残る形式になっていることがほとんどですので、すべての履歴を出してもらうことで隠蔽の可能性が低くなります。ただ、それでも改ざんがあったというような話も聞きますので、改ざんがゼロということはないのでしょう(システムには疎いので、機序はよくわかりませんが)。


 手書きのカルテの時代には、カルテに書いてある字が読めず、診療経過の検討が進まないということも多々ありました。他の弁護士や事務員に字が読めるか確認してもらったり(読める人がいたりするから驚きです)、アルファベットが読めないときには、単語を予想してインターネットで検索してみることもありました。それでもわからないときには、仕方がありません。「読めないので、なんと書いてあるか教えてください」と直接病院に尋ねることもありました。
 他方、電子カルテになると、当然、「字が読めない!」とイライラする無駄な時間を過ごすことは減りました。ただ、紙のカルテの時代には、字の大小や、囲みなど、カルテの記載の仕方で、医師の重要視したことがわかりやすかったのが、電子化によって、医師の感情が伝わってこないカルテになってしまいました。また、証拠保全に行って印刷する際、余白の多い頁を印刷しなくてはならなかったり、削除履歴まですべてもらうと資料が膨大になり、印刷費用も増加する傾向になりました。  
 検討のしやすさからいえば、やはり電子カルテがよいと思うのですが、無機質なカルテを見ていると、手書きのカルテが懐かしくなることもあります。(間宮静香)

  • <
  • 1
  • >