緑オリーブ法律事務所ブログ

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政府が9月29日、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)改正案を閣議決定し、国会に再提出しました。(産経新聞WEB版・9月29日

この改正案はもともと、本年3月11日、閣議決定され、国会に提出されていたものです。

内容は、一方で専門26業務(※)の区分をなくしながら、他方で業務単位での受入れ期間の制限を撤廃しようというもので、以下のとおり、派遣先が永続的に派遣労働者を受け入れ、使用できるようにしています。

① 派遣元で有期雇用の派遣労働者
ⅰ 過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聴取しさえすれば、賛成・反対にかかわらず、当該事業所でさらに3年間派遣労働者を受け入れることができ、その後も同様に受入れ期間を延長することができる。
ⅱ 事業所における同一の組織(部、課等)では3年を超えて継続して同一の派遣労働者を受け入れてはならない。=派遣先は、3年ごとに組織(部、課等)の派遣労働者を入れ替えれば、永続的に派遣労働者を受け入れ、使用することができる。また、派遣先は、3年ごとに派遣労働者の所属組織(部、課等)を変更しさえすれば、永続的に同一の派遣労働者を受け入れ、使用することができる。

② 派遣元で無期雇用の派遣労働者
一切受入れ期間の制限を設けない。

上記改正案は、本年6月20日、いったん廃案となっていました。
その背景に、労働者の強い反対があったことは間違いないですが、直接的には、派遣事業者に対する罰則規定で本来「1年以下の懲役」とすべき部分を「1年以上の懲役」と誤記したというお粗末さが理由でした。

「今年の就職は売り手市場」などといった景気のいいニュースも流れていますが、日本全体としては、非正規社員が増大し、雇用状況が明るいとはいえないのではないでしょうか。
今回の労働者派遣法「改正」は、ますます雇用の不安定化を招くことになるように思います。(浜島将周)

 

(※)専門26業種
労働者派遣法施行令で定められた26業務。業務を迅速かつ適確に行うために専門的知識や技術などを必要とする業務または特別の雇用管理を必要とする業務とされています。
労働者派遣法によって、派遣労働者が働くことのできる業務が限定された以前から、専門26業種については派遣が許されていました。
現行法では、専門26業種については、派遣受入れ期間の制限はありませんが、同じ業務に3年を超える派遣労働者がいて、新たに労働者を雇い入れようとする場合は、派遣先には派遣労働者に対して直接雇用を申し込む義務が発生します。
専門26業務は以下のとおり。
1)ソフトウェア開発 2)機械設計 3)放送機器等操作 4)放送番組等演出 5)事務用機器操作 6)通訳・翻訳・速記 7)秘書 8)ファイリング 9)調査 10)財務処理 11)取引文書作成 12)デモンストレーション 13)添乗 14)建築物清掃 15)建築設備運転・点検・整備 16)案内・受付・駐車場管理等 17)研究開発 18)事業の実施体制等の企画・立案 19)書籍等の制作・編集 20)広告デザイン 21)インテリアコーディネーター 22)アナウンサー 23)OAインストラクション 24)テレマーケティングの営業 25)セールスエンジニアリングの営業 26)放送番組等における大道具・小道具

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