緑オリーブ法律事務所ブログ

緑オリーブ法律事務所ブログ

日弁連で行われた「司法におけるジェンダー・バイアスとは」というシンポジウムに参加しました。ジェンダー・バイアスとは、社会的につくられた性差にもとづく偏見です。

労働分野などでの性差別、セクハラ、DV、性犯罪などの問題や被害がおきたとき、被害救済や権利回復を行うのが司法の場です。しかし、警察・検察、裁判所、弁護士など、事件の解決に関わっていく“プロ”が、女性ないし男性に対する一定のイメージや役割、反応等を前提として事件を取り扱ったり、自分の日常的、個人的な考え方(いわゆる“強姦神話”などの問題)を前提にして判断している実態があるのではないかということで、議論や検討が行われました。

これらの事件では性質上客観的証拠が乏しいものが多く、被害者の供述が大切な証拠になりますが、痴漢事件などでその信用性が不当に厳しく判断されている例もあります。また、相談や捜査の段階や司法手続の場で、心ない言動によって、被害者の方が傷つけられること(二次被害)も起きています。

きちんと被害を認めてほしい、加害者にきちんと責任をとってもらいたいという思いで、被害者が法的手段に出ることを決断し、相当な負担を乗り越えて手続を進めても、ジェンダー・バイアスによって不当な判断が行われれば、しかるべき被害救済や権利回復が図られません。司法への信頼が低下し、被害者の泣き寝入りが増え、加害者は処罰されたり責任を負 わされることがないというイメージが社会にアピールされて新たな被害を生み続けるという悪影響も出かねません。

シンポジウムでは、問題・事件を扱う関係者が、思考の中でジェンダー・バイアスがかかっているかもしれないということに気づくこと、そしてバイアスをなくしていくために科学的な知見を身につける専門の教育・研修の機会が重要ということが確認されました。

(橫地明美)

  • <
  • 1
  • >