緑オリーブ法律事務所ブログ

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 通信教育大手のベネッセコーポレーションによる顧客情報流出事件で、顧客らが同社らに対し損害賠償(慰謝料)を請求していたところ、東京高裁が、請求を棄却した一審判決を変更し、ベネッセと個人情報を管理する業務委託先のグループ会社に対し、慰謝料の支払を命じる判決を下しました。(朝日新聞DIGITAL・6月28日産経新聞WEB版・6月29日
 慰謝料額は一人当たり2000円にすぎませんが、ベネッセの顧客情報流出をめぐる同様の訴訟で、賠償責任を認めたのは初めてのようです。


 今回の判決は、「顧客の私生活の平穏に影響を及ぼす恐れがあり、精神的苦痛が生じることは避けられない」と指摘しました。端的にいえば、情報流出による不安感が認められるので、慰謝料を認める、というものです。
 これに対し、原審の東京地裁と横浜地裁の各判決は、「具体的な被害が確認されておらず、慰謝料が必要な精神的苦痛はなかった」としていました。また、同種事例についての大阪高裁判決も、「本件漏えいによって、迷惑行為を受けているとか、財産的な損害を被ったなど、不快感や不安を超える損害を被ったことについての主張、立証がされていない」として、慰謝料を認めませんでした。
 実は、この大阪高裁判決については、すでに最高裁が破棄・差し戻しており、今回の東京高裁の判断は、その流れに沿ったものです。


 基本情報の漏洩だけで損害賠償責任を認める流れが定着しそうです。(浜島将周)

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