緑オリーブ法律事務所ブログ

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 ご報告が遅れましたが、以前このブログでもご紹介したI社グループ企業内でのセクハラ・ストーカー事件について(2016年8月19日「セクハラ、ストーカー訴訟で逆転勝訴しました」)、2月15日、最高裁判決が言い渡されました。(読売新聞ONLINE・2月15日毎日新聞WEB・2月15日
 加害者の上司個人、その使用者である製造会社(I社子会社)、被害者の女性が所属していた派遣会社(I社子会社)の3社については、すでに上告が受理されず、セクハラ・ストーカー行為の事実と責任を認めた名古屋高裁判決が確定していました。今回、最高裁が判断を下したのは、グループの頂点に立つ親会社I社の責任についてです。


 この点、最高裁は、「本件の事情のもとでは、勤務先会社が使用者として負うべき雇用契約上の付随義務を親会社が自らが履行し又は親会社の直接間接の指揮監督の下で勤務先会社に履行させるものであったとみるべき事情はうかがわれない。親会社は、自ら又は被害者の使用者である勤務先会社を通じて雇用契約上の付随義務(労働者からの相談に応じて適切に対応すべき義務)を履行する義務を負うものということはできず、勤務先会社が本件付随義務に基づく対応を怠ったことのみをもって、親会社の被害者に対する信義則上の義務違反があったものとすることはできない」としました。


 他方で、親会社の相談窓口制度においては、「本件グループ会社の事業場内で就労した際に、法令等違反行為によって被害を受けた従業員等が、本件相談窓口に対しその旨の相談の申出をすれば」、「相応の対応をするよう努めることが想定されていた」から、「上記申出の具体的状況いかんによっては、当該申出をした者に対し、当該申出を受け、体制として整備された仕組みの内容、当該申出に係る相談の内容等に応じて適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合がある」と解される、ともしました。
 すなわち、一定の事情があれば、相談申出をした子会社の従業員に対し、親会社が適切に対応すべき信義則上の義務を負う場合があること、すなわち、親会社の子会社従業員に対する職場環境配慮義務があることを認めました。最高裁として初判断だと思います。


 ただし、本件では、
・ 被害者への聞き取り調査はしなかったが、加害者その他の関係者の聞き取り調査はしたこと。
・ 事業場外で行われた問題行為に関する相談であり、加害者の職務執行に直接関係するものとはいえないこと。
・ 相談申出があった当時、被害者はすでに加害者と同じ職場では就労しておらず、問題行為がされてから8か月以上が経過していたこと。
などの事情があったとして、結論としては、本件における親会社の信義則の義務違反を否定しました。
 この事実認定と結論には不満がありますが、最高裁が親会社が子会社従業員に対する職場環境配慮義務を負う場合があると認めたことは画期的です。


 なお、本件は、横地、亀井、濵嶌が被害者の代理人を務めました。(浜島将周)


 


 


 

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