緑オリーブ法律事務所ブログ

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 改正された民法(以下「新法」といいます)は,一部の例外を除いて,2017年6月2日(公布日)から3年を超えない範囲の日に,施行される予定です。


 今回は,社会生活に関わりの深い「時効」について新法の概要をご説明します。


1 消滅時効についての見直し
(1)原則的なもの
 時効期間がスタートする時点(起算点)と時効期間について,
 ①債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間
 ②債権者が権利を行使することができるときから10年間
となります。
 たとえば,契約に基づく債権で,履行期を定めた場合は,契約当事者である債権者は履行期を知っていることが通常でしょうから,履行期から5年で消滅時効が完成することになります。
(2)例外的なもの
 これまで,職業別の債権,定期金債権,定期給付債権については,民法上,原則的な規定とは別に短期消滅時効の規定がありました。
 新法では,職業別債権と定期給付債権の短期消滅時効の規定は廃止され,上記(1)に統一されます。定期金債権については,時効の起算点が見直されます。
 さらに,ケガをしたり死亡したりした場合(いわゆる人身損害)の損害賠償請求権については,
 上記(1)①について,被害者や法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間(①’)に,
 上記(1)②について,権利を行使することができるとき,または,不法行為時から20年間(②’),となります。
 他方,人身損害が生じていない場合の不法行為による損害賠償請求権(例えば,名誉毀損による慰謝料)は,①’の「5年間」の部分が「3年間」となります。


2 時効の中断・停止の見直し
 これまで,「時効の中断」という,一定の事由が発生した場合に時効期間の進行が止まり,すでに進行した時効期間がリセットされるという制度がありました。
 新法では,一定の事由発生によっても,すでに進行した時効期間はリセットされず,その事由が終了してから6か月が経過するまで「時効の完成が猶予される」という制度が原則的になります。
また,従来の「時効の中断」は「時効の更新」という名称となり,更新事由も整理されました。
 たとえば,債権者が,裁判上の請求(例:訴訟を提起する)をすると「時効の完成が猶予」されます。その裁判の結果,確定判決等によって権利が確定すれば,「時効の更新」によって新しく時効期間が進行し始めます。


3 経過措置について
 施行日以後に発生した債権には新法が適用されます。
 施行日後に発生する債権であっても,原因となる法律行為が施行日前に行われたときは,新法ではなく,改正前の民法が適用されます。
 また,不法行為の損害賠償請求権の20年の時効については,施行日に20年が経過していない場合は新法を適用し,20年を経過している場合は改正前の民法が適用されます。
 不法行為による人身損害については,施行日に,行為から3年経過していなければ新法を適用し(5年に延長),3年経過していれば改正前の民法が適用されます(完成した時効に影響なし)。 

4 他の法律について
  民法に沿って規定が設けられている,商法,会社法などの周辺の法律については,このたびの民法改正に即した見直しなどが行われる予定です。

 なかなか複雑ですので,契約をしたり損害賠償請求をする際には,起算点や時効期間について,十分確認しながら,権利行使の機会を逸しないようにしていかなければいけませんね。
(横地明美)

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