緑オリーブ法律事務所ブログ

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 以前、「インターネット検索サイトGoogleの検索結果から、自身の逮捕に関する記事の削除を男性が求めた仮処分申立てで、「犯罪の性質にもよるが、ある程度の期間の経過後は、過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」として、削除を認める決定が出されていた」と、このブログでご紹介しましたが(2016.2.29.「忘れられる権利」)、この事件について、最高裁の決定が出ました。(朝日新聞DIGITAL・2017年2月2日産経ニュース・2017年2月1日


 最高裁は、「忘れられる権利」については言及せず、従来のプライバシー権の考え方をもとに判断基準を導きました。
 まず、検索結果について、「現代社会でインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしており、検索結果の削除はこの役割に対する制約になる」とし、検索結果の表示は情報伝達の媒介にすぎない、とのGoogleの主張を退け、表現行為の側面を持つ、と評価しました。
 そのうえで、①記事記載の事実の性質や内容、②事実が伝達される範囲とプライバシー被害の程度、③人物の社会的地位や影響力、④記事の目的や意義、⑤社会的状況、⑥(実名や住所など)事実を記載する必要性などを考慮する要素として列挙し、プライバシーの保護が表現の自由より明らかに上回る場合に削除が認められる、と判断基準を示しました。削除が認められる基準としては、かなり高いハードルを設定したと思います。
 実際、今回削除を求めた男性は、5年以上前に、女子高校生にお金を払ってわいせつな行為をしたとして逮捕され、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で罰金刑(略式命令)を受けたのですが、最高裁は、この事件が「社会的に強い非難の対象」であり、「今も公共の利害に関する事実」だとして、結論としては削除を認めませんでした。


 どのような事案であれば、「プライバシーの保護が表現の自由より明らかに上回る場合」だといえるのか、判例の蓄積が待たれます。(浜島将周)

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