緑オリーブ法律事務所ブログ

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12月16日,夫婦同姓強制と再婚禁止期間を定める民法について,最高裁の判決が出されました。

内容はマスコミ報道などで確認していただくとして,夫婦同姓強制の判決(多数意見)は,残念ながら,憲法上の人権の視点が薄く,「憲法の番人」としての最高裁が役割を果たしていない,憲法が生かされていないように感じます。

結婚や家族のことは,憲法24条がわざわざ「個人の尊厳と両性の本質的平等」という縛りを明記して,その範囲で法律を作るよう国会に求めています。

今回の裁判の原告は,今の民法が,夫又は妻の姓を「夫婦」の姓と決めた上で届け出てはじめて,法律上の有効な結婚を認める制度になっていることによって,自分の尊厳が守られていない,配偶者の間で本質的,実質的にみて不平等な取扱いだと訴えていました。

しかし,多数意見は,民法の制度がそれなりに合理的かを検討しただけで,「個人の尊厳」や「両性の本質的平等」という人権を侵害していないかというところをまったく検討していません。

 

憲法は,法律よりも上のレベルの「最高法規」です。国会で成立した法律が憲法からみて問題がないかどうかは,最後は最高裁判所が判断することになっています。問題がある場合は「違憲」となります。

国民の多数派から選ばれた議員が国会で作る法律が,多数派に含まれない,いわゆるマイノリティーの人の人権を傷つける場合があるので,その法律によって, 自分の憲法上の権利,人権が傷つけられていると救済を求める人がいれば,救済するのが裁判所,特に,最高裁判所の役割です。その救済によって,法律が憲法違反であることが示され,国会は憲法に合うよう法律を改正すべきことになりますので,同じような立場にある人の人権が守られ,憲法が守られることになるのです。

 

今回,5人の裁判官の違憲の意見は,人権の視点に立ち,憲法24条に反していないかを正面から検討,判断して,説得的な理由づけで24条違反を認めました。最高裁判所の判断は15人の裁判官の「多数決」で決まるため,人員構成が違い,あと3人の裁判官が違憲と考えていたら,8対7で全体として違憲の判断が出たことになります。

 

多数意見としては違憲判断が出なかったとはいえ,国会は,今の法律を,より憲法の内容に沿った法律に改正していくことはできます。

個人の生き方,人生にかかわる大切な問題ですし,もちろんいろいろな意見がありますので,引き続き議論していくことが大切だと思います。

(橫地明美)

 

 

 

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