緑オリーブ法律事務所ブログ

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マンガ・アニメ関連のグッズを扱う中古ショップ「まんだらけ」が、とある店舗で発生した万引き事件について、公式サイトで“犯人”が写っているとされる防犯カメラ画像をモザイクを掛けて公開し、「1週間以内に返しに来ない場合は顔写真のモザイクを外して公開します」と〝警告〟したことが話題になっています。
「まんだらけ」は結局、モザイクを外さず、警察の捜査に委ねると判断しました(「まんだらけ」公式サイトより)。

私は、「まんだらけ」がモザイクを外さなかったことは妥当だったと考えます(さらに言えば、本来はモザイクを掛けた公開もすべきではなかったと考えます。)。
理由は大きく分けて3つ。

1. 冤罪の可能性
“犯人”が本当の万引き犯でなかった場合(冤罪)、万引き犯とされた人の被った不利益は計り知れないものになります。後から謝ってみても、取り返しがつきません。

2. 「まんだらけ」側が罪に問われる可能性
“犯人”が本当に万引き犯であったとしても、「(盗品を返さなければ)モザイクを外して顔写真を公開する」と〝警告〟する行為は、人の名誉に対して害を加える告知をしたとして、「まんだらけ」側が脅迫罪(刑法222条1項)に問われる可能性があります。
また、実際に公開すれば、公然と事実を摘示し人の名誉を毀損したとして、「まんだらけ」側が名誉毀損罪(刑法230条1項)に問われる可能性があります。
真犯人であったとしても、罪としては成立します(真犯人かどうかは、「まんだらけ」側の違法性の程度問題です。)。犯罪に対して犯罪(的手段)で応じてしまっては、法秩序が成り立ちません。

3. 情報拡散の可能性
1.2.とも関連しますが、“犯人”が本当に万引き犯であろうとなかろうと、一旦公開されてしまった画像は永久に残ります。デジタル化された情報は、いつまでも明瞭な記録として保存することができますし、一旦流通した情報は、どこかでだれかがコピーを繰り返し、インターネットを通じて拡散し続け、回収することが不可能になります。
真犯人であっても、一度の過ちで、その人が一生糾弾され続けてよいわけはありません。その人の立ち直りの機会を奪うことは許されないはずです。
真犯人でなければ、例えば裁判で無罪が確定しても、その後もあたかも万引き犯であるかのような情報が出回り続ける悲劇が生じます。

そして、以上のことは、モザイクが掛かったままの状態でも生じうることです。
おそらくすでに、ネット上のどこかで、モザイク画像の“犯人”を特定する作業が行われているでしょう。その情報が拡散しているかもしれません。拡散後の情報について、だれが責任を取れるのでしょうか。

デジタル社会の今、情報の扱い方について、より一層の慎重さが求められています。(浜島将周)

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