緑オリーブ法律事務所ブログ

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 「明日、ママがいない」 という児童養護施設(とは全く違いますが)を舞台にしたドラマが放映されています。

 もちろん、弁護士の端くれである以上、表現の自由の重要性は認識していますし、ドラマという娯楽であることも理解していますが、児童福祉を取り扱う弁護士として、このドラマを大変危惧しています。

 既に慈恵病院や全国児童養護施設協議会も声をあげられているようですし、問題点を述べればキリがないですが、

・ 描かれている児童養護施設が、全く現実の児童養護施設とかけ離れていること。(しかも極端に悪い方に。)

・ 児童養護施設を「捨てられた」子どもたちが入る場所として描いていること。

 少なくともこの2点が大きく現実と解離しています。


 「ドラマなんだからめくじら立てるな」という意見もあるようですが、保護される可能性のある子どもがこのドラマを見た場合、一体どう思うでしょうか。大人と違い、判断能力のない子ども達は、児童養護施設がこのドラマのようなところだと誤解するでしょう。虐待を受けて保護される場合、一度学校や友達から離れることが必要です。それだけでも心理的負担が大きいのに、さらに、「捨てられた子どもが行く」「体罰がある」施設に行こうと思うでしょうか。

 子ども達が児童養護施設を誤解して、SOSを出さなくなるのではないか・・・ようやく、児童虐待が世間に認知されるようになり、虐待通告や、子どもからのSOS発信の場が増えてきているのに、その流れに逆行するのではないか、大変に危惧しています。 もちろん「捨てられた」とレッテルをはられる現在の入所者の子どもたちに与える影響も計り知れません。


 児童養護施設や里親制度、児童養護施設の先にある自立援助ホーム(私が運営委員になっている子どもセンターパオの「ぴあ・かもみーる」は自立援助ホームにあたります。)等、児童福祉について、多くの方に知っていただきたいと思っています。せっかく児童養護施設を舞台に選んでいただいたのに、偏見や差別・誤解を生みかねないこのドラマは、残念でなりません。ドラマを制作される方も、扱う題材、それに与える影響を十分吟味していただきたいものです。

 このドラマの影響で、SOSを出せずに虐待を受け続ける選択をする子どもがいないことを祈るばかりです。取り越し苦労だとよいのですが。(間宮静香)

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