緑オリーブ法律事務所ブログ

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 憲法改正手続について定めた「日本国憲法の改正手続に関する法律」(いわゆる「国民投票法」)の改正法案が6月11日、参院本会議で、共産党を除く与野党の賛成多数で可決、成立しました。(NHK NEWS WEB・6月11日東京新聞Web・6月11日


 国民投票法は、2007年の第一次安倍政権のもとで成立し、2014年に投票年齢の引き下げ、2017年に投票の利便性を高めるための7項目(①「選挙人名簿の閲覧制度」への一本化、②「出国時申請制度」の創設、③「共通投票所制度」の創設、④「期日前投票」の事由追加・弾力化、⑤「洋上投票」の対象拡大、⑥「繰延投票」の期日の告示期限見直し、⑦投票所へ入場可能な子どもの範囲拡大)のために改正案が提出されていました。およそ3年を経ての成立となりました。


 「国民投票法の整備が不十分で改憲ができないというのは本末転倒だ」などといった声もありながら、なかなか成立に至らなかったのは、改憲(例えば、自衛隊の明記や緊急事態条項の創設など)に積極的な政党(自民、維新など)と、改憲に慎重な政党(立民、共産など)との間で協議が整わず、ずっと継続審議になっていたからです。
 慎重派は、国民投票法の整備が憲法改正に向けた下準備であり、憲法改正の必要性が認められない、あるいは、憲法改正の議論がまだ足りていない現状では不要である、というそもそも論のほか、広告規制、資金の上限規制、最低投票率の問題など投票の公正を保障する議論がなされていない、として、反対してきました。
 今国会では、とくに広告規制について、改正法でもテレビ広告等の費用に上限がないため、資金力のある政党や政治団体の主張が結果に影響を与えかねないことが問題となっていました。


 この点について、与党が、広告規制などについて「3年をめどに必要な法制上の措置、その他の措置を講じる」との一文を挿入する修正に応じたため、立民党が賛成に回り、成立に至りました。


 それでも、私個人としては、やはり改正国民投票法にはまだ問題が多く、制定には慎重であるべきだったと考えます。
 6月2日には、国会で参考人質疑が行われましたが、改正案については与党推薦の参考人を含めて登壇した4人全員が討議不十分と認める状況となっていました。(時事通信.COM・6月2日
 3年を目途と見直しについては、与党の一部から早くも、検討課題を置き去りにして国民投票に踏み切っても問題がない、との声が上がっています。見直しがされるとしても、テレビ広告だけが検討されるのでしょうが、ネット広告の規制も必要です。
 また、最低投票率規定は見直しの対象外ですが、有権者の1~2割台の賛成でも改憲案が通る可能性があることは、民意をくみ尽くす上で重大な欠陥です。
 さらに、やはりそもそも論=憲法改正が本当に必要か、の議論も不十分だと思います。今回の採決に対して、「コロナ禍に便乗」したという批判があるのももっともです。
 国民投票法の議論について、今後も注目していきましょう。(浜島将周)


 



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