緑オリーブ法律事務所ブログ

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 以前このブログでご紹介した「給与ファクタリング」について、実態は「法外・暴利の貸金だといわざるを得ません」と書きましたが(2019年12月3日「〝給料ファクタリング〟にご用心を」)、5月13日、給料ファクタリングは貸金業法違反で契約は無効だとして、利用者らが給与ファクタリング業者に対し、手数料名目で支払われた金銭の返還を求めて東京地裁に提訴したとの報道がありました。給料ファクタリングの被害を巡る提訴は全国初のようです。(東京新聞Web・5月18日


 ただし、実はすでに3月24日、東京地裁で給与ファクタリングは貸金業法違反で契約は無効だとの判決が出されています。(朝日新聞DIGITAL・3月25日


 これは、給与ファクタリング業者が利用者を訴えた裁判でした。業者が7万円の債権を4万円で買い取り、4日後に支払う契約で買戻し日を設定したものの、利用者が支払いを怠ったために、業者が利用者に対し、金銭の支払いを求めました。
 判決は、大要、
・給与ファクタリングの仕組みは、経済的には貸付けによる金銭の交付と返還の約束と同様の機能を有するものと認められ、本件取引における債権譲渡代金の交付は、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」による金銭の交付であり、貸金業法や出資法にいう「貸付け」に当たる。
・そうすると、業者は、業として「貸付け」に該当する給与ファクタリング取引を行う者であるから、貸金業法にいう「貸金業を営む者」に当たる。
・本件取引は、年850%を超える割合による利息の契約をしたと認められる。これは、貸金業法42条1項の定める年109.5%を大幅に超過するから、本件取引は同項により無効であると共に、出資法5条3項に違反し、刑事罰の対象となる。
・したがって、業者による利用者に対する不当利得返還請求は、その前提を欠くものであるから、認められない。
・また、本件契約は、出資法5条3項に違反し、刑事罰の対象となる契約であるから、不法原因給付に該当し、いずれにしても、利用者は交付を受けた金銭の返還義務を負わない。
と判示しました。


 金融庁も、給与ファクタリングについて、「給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!」と題して、
「いわゆる「給与ファクタリング」などと称して、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。」
「貸金業登録を受けていないヤミ金融業者により、年利に換算すると数百~千数百%になるような法外な利息を支払わされたり、大声での恫喝や勤務先への連絡といった違法な取立ての被害を受けたりする危険性があります。」
「いわゆる「給与ファクタリング」の利用により、本来受け取る賃金よりも少ない金額しか受け取れなくなるため、経済的生活がかえって悪化し、生活が破綻するおそれがあります。」
などと違法なヤミ金融業者と同視して、利用注意を呼びかけています。


 このような金融庁の呼びかけや判決により、今後は給与ファクタリング業界内でも、ある程度の自浄作用が働くとは思いますが、やはり法律による規制も必要でしょう。新型コロナウィルスの影響で生活が困窮する中での利用も多数あると考えられますから、対策は急務です。


 当事務所は、借金・債務整理のご相談は、初回無料としています。まずはお気軽にご相談ください。(浜島将周)

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